NTT docomoの赤いニューロゴがnamcoに見えて仕方ない最近。
namcoバンダイナムコ・ゲームスに変わったんだよなと,
去年の就活を思い返す。


 2DKもある部屋に住んでいるのに, 足の踏み場もない。
そんな生活を変えたくて, 片づけを始めた。


 持っている本は3分の1ほど捨ててしまった。
服も同じくらい, 捨てた。


 『テニスの王子様』と『SLAM DUNK完全版』をどちらか捨てようかと思って,
迷わずスラムダンクを捨てたと話をしたら, スミオに「あり得ない」と言われた。
手塚ゾーンを越えるインパクトを湘北高校バスケット部に感じなかっただけの話だ。


 そんなわけで, 自分にとっていらないものを捨てていくと,
一冊一冊への注目度が高くなる。


 まあクラウゼヴィッツの『戦争論』とか, カントの『道徳形而上学原論』だとかは,
何かの機会に流刑にでもならない限り, 一生読まないとは思うが。


 買ってから初めて, 『寺山修司名言集』を開いた。
そしてパラパラめくって目に留まったページにひとつの文章。

「片思いはレコードでいえば、裏面のようなものです。
 どんなに一生懸命うたっていても、相手にはその声が聞こえない」
                                寺山修司

 その文章に釘づけになり, しばしのあいだ沈黙する。
それでもなお, 片思いが幸せなのはなぜだろう。


 男同士で話をしても, 片思いが一番いい, なんて風に言ったりもする。
片思いは生々しくない, 痛みもない, いや仮に痛かったとしても,
それは空想の中のレジャーのようなものだ。


 だから20歳を過ぎて, 片思いなんてしちゃいけないんだろう。
「片思い」の反対語は, 「賭博」のような気がする。


 僕は, 寺山の短歌の中で一番好きな作品を探し出した。

大工町寺町米町仏町老母買う町あらずやつばめよ
                         寺山修司

 僕はふっと「猫町」と加えてみたくなる。
寺町があり仏町がある, そんな町にはきっと, 猫町もあるはずなのである。


 書棚から, これも買ってからきちんとは一度も読んでいない,
猫町 + 心象(いめーじ)写真』という本を取り出してみる。
「ひとが猫のやうに見える」(萩原朔太郎


 知らないところにあるはずの, その猫町に行ってみたい, と思った。
今年の冬あたり。