Satisfaction and impression

 自分がいま働いているレストランには、オーダーを取ったり料理を出したりといった最前線の接客をするポジションがあり、それはサーバーと呼ばれている。僕はミスをしてはそのポジションに入れてもらえず、また入れてもらえるようになってはミスをし、を繰り返していた。このところ、少しずつ3卓担当のサーバーに入れてもらえるようになってきた。ちょっと前までは2卓だったことを考えると進歩には違いないのだが、同期の連中は5卓はふつうにこなしたりしているので、いかに俺の成長が遅いかをわかってもらえると思う。

 このポジション、サーバーに入るようになって、いろいろと考え続けてきたことがある。それは、このポジションで接客をする際には、2つの大きな要素があるということだ。ひとつには、お客さまに満足(Satisfaction)をしてもらうこと。それは、要求や期待を満たすことでお客さまには満足してもらえる。そのためには、オーダーをきちんと正確に取ったり、料理の出し遅れがないように注意したり、言葉遣いや説明をきちんと正しく行ったり、水やドリンクのお代わりに気を遣ったりといった、オペレーションの部分を正確に行うことで達成される。

 トレーニングを通じては、オペレーションの部分を教えられる。もちろんその後も、その人間を評価される際にはオペレーションの部分で評価されることが大きい。しかし、果たしてオペレーションだけでいいのだろうかという思いがずっとあった。「満足」という言葉を辞書で引くと、「望みが達せられて不平がないこと」と説明されている。満足を与えること、Demandを満たしSatisfactionを与えることは重要だが、それはつまり文字通り「満たした」ということでしかない。このレストランは、テーマパークの中にあるので、それ以上の何かを求めてきているお客さまもきっと多いと思うのだ。というより、このテーマパークに来るということの大きな意味は、「楽しい思い出をつくる」ということにあると思う。それなら、そのパークの中にあるこのレストランでも、そこで働く自分達は、オペレーションをこなすことで満足するのではなく、それを超えるそれ以上の何か―感動(Impression)をお客さまに与えることを、少なくともひとつの目標にはしなければいけないのではないかと思う。

 自分は、あと少しでこのレストランを去ることになっている。あと残り少ない期間で何を目標にしようかと考えていたが、ここに来て目標が定まった。4卓を担当して、SatisfactionとImpressionをお客さまに与えられるサーバーになること。残る時間を考えると高すぎる目標かもしれないが、それを達成することが、自分がこの場所で働いたことへの自分の中での答えにもなる気がしている。