マツ○ラスケート

 そうそう、スケートの合宿授業のことを書いていなかった。俺の大学最後の授業、「スケート」の集中授業が先週栃木県の日光であった。まあスケートそのものは置いといて(ぉぃ)、若者たちによる伝説について触れてみたい。

 その前にマツ○ラスケート店について書いておかなければならない。合宿の事前説明会で配られた謎の紙。「SALE」と大きく書かれ、15000円の靴が8000円になると書かれてあった。おそらくうちの大学のOBだろう。構造的癒着というやつだ。一応、スケートの練習を始める際は自分の靴を買ったほうがよいという話だったので、俺も買う気MAXでその店に行ったのだ。時間はもう夕方だった。

 しかし、その紙に書かれた住所に行っても何も見当たらない。おかしいな〜と思って辺りを見回していると、小さな勝手口のようなドアの上に小さく「マツ○ラスケート」という看板が出ていた。「えっふつうの店じゃねえのか??」。この時点で猛烈な不安に襲われた。意を決して扉を開けると、中は薄暗かった。箱のようなものが無造作に積み上げられたその奥の部屋で、1人の男性がテレビを見ていた。そのテレビの光がその主らしき男の顔を青白く光らせていた。俺は、開けかけた扉をまた戻し、何事もなかったように帰路についた。

 そのマツ○ラスケートは、いくつかの伝説を生み出している。Iというヤツはホッケー靴と抱き合わせで錆止めスプレーを1100円で買わされたのだが、女の子がマツ○ラスケートに行ったら「錆止め?んなのいらないよ、きちんと拭いてればエッジは錆びないからさ」とのたまったという。また、ホッケー部の人に聞いたら、「その靴でその値段って高いんじゃねーの」と言われたり。

 ところで俺の部屋の副室長はそのIだったんだけど、途中から室長の俺が室長権限ですべての業務を委託していたやつであり、俺が某ホスピタリティ・コンテストで東京戻っている間にコンパ係に任命されたとかで、俺が旅館戻ると「出し物やらなきゃいけないんですよ〜何やります〜?」とか聞いてきたのでそれも室長権限ですべてIに任せていた(権限濫用だな…)。

 ところがマジでこいつがこだわり野郎で、「もうタバスコの一気飲みしかないっすね!俺いけますよ」とか「タバスコ体に塗るってのものアリですね!」とか、危険な方向性しか提案してこないので、体張ることしか頭にねえのか若手芸人かよこいつと思っていたのだが、ある晩メシの席にて、不意に顔を輝かせていきなり、
 「そうだ小川さん、森本レオのマネでマツ○ラスケートのオヤジをやってくださいよ〜 鉄板ですよこれ絶対!!」とか言ってきたので、いや鉄板なわけねーだろ(しかも俺マツ○ラのオヤジ知らねーし)と思いつつあまりのシュールさに想像して俺も少し笑ってしまったが、こいつのお笑いレベルは高いのか低いのかよくわからない。

 しかし、タバスコ一気飲みをやらなくて正解だったに違いない。今回の合宿にはUという最強キャラがおり、そいつの班の出し物は二人羽織でコーラや牛乳イッキをさせるというものだったが、そのUがその出し物の横で頭にローソクを立てて実況するというお笑いウルトラクイズ的な体の張り方をしてきてすべてを持っていってしまったからだ。最初は横になって乳首に2本ローソクを立てると言ってたらしいがさすがに同じ班のやつらに止められたらしい。髪の焦げる匂いを漂わせながら最後は絶叫を残してUは消えていった。

 結局俺らの班は、いつもここからの調子でみんなで拳を構え、
(俺)「スケート七不思議ーーー」
(班全員)「スケート七不思議ーーー」
(俺)「毎回、食事には必ずトマトとキャベツの千切りがついてくるーーー」
(班全員)「毎回、食事には必ずトマトとキャベツの千切りがついてくるーーー」
 微笑ましさ全開だが、くだらないことでも繰り返しで言うことでかなり面白くなった。Iと俺は同じ班だったが、最後のオチはマツ○ラスケートの錆止めスプレーであったことは言うまでもない。