横山大観展

 『没後50年 横山大観―新たなる伝説へ』と題された東京六本木・国立新美術館の展覧会に行ってきました。

 僕にとって横山大観は特別な存在です。京都国立近代美術館で初めてその絵の世界を目の当たりにして、心の底まで取り込まれました。作品の中でも特に『生々流転』を目にしたときの衝撃は忘れられません。そこには生と死、時の流れ、世界の変転が存在していました。

 今回、東京でも横山大観展が開催されるということでさっそく行ってきました。大観の絵を前にして感じることは、その絵から世界の様相をいくらでも読み取れるということです。そして、そこからその世界に入っていける。すると、確かにその世界(宇宙)が存在しているという感覚が生まれてきます。『月夜の波図』や『霊峰十趣・夜』といった作品などは、感覚として吸い込まれそうになります。

 しかし、少し残念だったのが、それぞれの絵の解説や、あるいは年表といったものの展示がなかったことです。それがどういった意図でかはわからなかったのですが、僕にはそういったものがある方が、より大観の世界と軌跡を俯瞰しやすくなるような気がしました。例えば琳派とどう絡んでいるのか、「没線主彩(もっせんしゅさい)、朦朧体」といった技法はどのようなもので、この時代の画壇においてどのような意味を持つ試みであったのか、などの解説があった方がより視点が増えると思います。また、時代背景といったものも、その絵を巡る視座として不可欠のもののような気がします。戦争のときに描かれた絵がどういうものであったのか、など。この点では、京都国立近代美術館での展覧会の方が、自分自身が得るものは大きかったような気がします。

 それでも、一度も大観の絵を目の当たりにしたことのない人は、ぜひこの機会に足を運んでみてくださいな。
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