中国の人は日本人が嫌いか

 「中国人は日本(日本人)が嫌い」という情報がマスコミから流れてくるたび、前から思うことがあった。むしろ、日本人のほうがはるかに中国(中国人)嫌いではないのかと。

 自分には、日本人が中国人を嫌いになる大義名分作りとして、中国人は日本人が嫌いであるという言説を事前に作り上げようとしているように感じられて仕方ない。度重なる中国食品の健康被害報道でもそうだが、それよりもはるかに大きな事態をアメリカも牛肉を通じて日本に行っていたことはどう考えればよいのだろう。中国に対してはまず感情論が先行しているように感じられる。日本および日本人の方こそがだ。

 実際に中国に行ってみればわかるが、それほど中国で日本(日本人)が嫌われているわけではない。私的な感想ではあるが、それをより正確に表現するなら、日本で流布している「抗日・反日」という反発よりは日本がかつて行った戦争や小泉政権時代の靖国参拝などの「行為」に対して中国の人々は怒りを持っているように感じられる。実際には、日本人は好きだという中国人は多いのである。

 僕が中国で出会った人々は、みな親切だった。上海でも北京でも大連でも、困った時は、何度となくその親切に助けられた。もちろん、中には無条件で日本および日本人が嫌いという人もいるだろうし、地下鉄で日本語で喋ってたら恐ろしい顔で睨まれたこともある。しかし、北京のテレビでは日本のアニメがゴールデンタイムで放送され、上海の深夜には「たそがれ清兵衛」の中国語吹替が放送され、天津の小さな女の子が「一休さん」のアニメの主題歌を携帯の着メロにしているのだ。

 僕が、テレビの報道番組などで「中国のメディアが日本に対してこのような批判を…」とか、「反日デモが発生し…」などといった表現を目にする度に悔しい思いがする。日本こそが、すり替えを行っているのだ。そのすり替えとは、中国の人々の日本の「行為」に対する怒りを日本の「国」「国民」に言い換えていることだ。そのように言うことで、日本は自らの安泰と正義を信じ続けることができるし、日本のメディアは日本人に中国を嫌いになる理由をばら撒いているように感じられる。アンフェアじゃないか。