いまさらの優生思想

レヴォリューション No.3 (角川文庫)

レヴォリューション No.3 (角川文庫)

という本を読んだのだけれど。

 話は変わるけど、インターネットの最大の功績は、個々人が車輪の再発明をしなくてよくなったことだ。たとえば、おとついの僕は「アンチエイジング」という言葉から連想して「オプティマルエイジング」という言葉を思いついた。それでブログの記事をひとつ書こうとすら思ったけど、ふとモノグサはよくないと考え直し、「オプティマル エイジング」でググるといーっぱい出て来た。どうやらアンチエイジングの概念の(本来は)基底をなす考え方であるらしい。ふーむなるほど。というわけで俺は何も書かないという行動を選択したわけだ。

 で、先述の本を読んで、「優生思想」というワードが頭に浮かんだ。今度はどうせ誰かがもう書いてるだろうから自分で書くつもりはなく、ネットで適当にググったのだが、どうやら俺が思うような記事は出てこない。ゆえに不本意ではあるが俺がいま記事を書いているというわけだ。まあそれも、調べ方が適当ではないともいえる。自分が書きたいことを書く大義作りのために、「調べても出てきませんでした」と言いたいことは、日常のブログレベルでも研究論文レベルでもありうるわけで、結局その点での行動バイアスがかかっている可能性を自分で否定できはしない。

 さてさて、というわけで、本の話に戻る。この書中においてオムニバスの一編目でドクター・モローという生物学教師が生徒達に、「君たち、世界を変えてみたくはないか?」と語りかける中心的なシーンがあって、そのあとのドクター・モローの話の中で、「優等は劣等の遺伝子と結びつきながら、バランスを保っていく。それが本当は自然界の理なんだよ」という発言があるが、遺伝子について優劣を主張するのは紛れもない優生思想である。それを契機として生徒たちが行動を開始するのであるが、果たしてこの流れに基づいている本小説はどうなんだろうか。このドクター・モローは自身が母親の胎内において広島で被爆したから子どもを作らない、という話もしている。

 いまどき、こんな本書いちゃいけません。

 この本を書いてる金城氏が、この本を面白がる人や社会そのものをすべて笑い飛ばす、という意図で書いているのならばまだ多少は支持できるのだが、残念ながら本書からはそのことを伺い知ることはできないのである。



いのちを考える―バイオエシックスのすすめ

いのちを考える―バイオエシックスのすすめ

少し前の本ですが、幅広く生命倫理(bioethics)ということを考えるのにお勧めの本です。ちなみに木村利人先生は、日本で初めてインフォームド・コンセントという用語を提唱した人です。